TiE UP! Vol.7
giraffeの生みの親・スマイルズ代表の遠山正道が聞く。
JALの共創リーダーが、
29歳で起こした“サラリーマン一揆”とは。

TiE UP! Vol.7<br>giraffeの生みの親・スマイルズ代表の遠山正道が聞く。<br> JALの共創リーダーが、<br>29歳で起こした“サラリーマン一揆”とは。

日本の航空業界で最も長い歴史を持ち、多くの人の夢を運んできた日本航空(以下、JAL)。TiE UP!Magazine vol.7のハタラキビトはJALという大企業に勤めながら、「JALをベンチャーに。」というミッションをかかげ、新規プロジェクトを次々に立ち上げるW-PIT(Wakuwaku-Platform Innovation Team)の代表の松崎さんにお話を伺いました。

インタビュアーは、“サラリーマン一揆”をコンセプトにした「giraffe」の生みの親でもあり、株式会社スマイルズの代表取締役社長・遠山正道。自身も三菱商事の社員でありながらSoup Stock Tokyoを創業し、三菱商事の社内ベンチャー1号としてスマイルズを設立した経験もある遠山が、大企業に勤めながら自分のやりたいことをやる本質に迫ります。

「公私同根」という言葉に共感。やりたいことをやるために、Wakuwakuを武器にしたチームを発足。

遠山正道

遠山正道(以下、遠山)

本日はよろしくお願いします。いきなりですが、なにやら毎朝散歩対談をしていると聞いたんですが。

松崎志朗

松崎志朗(以下、松崎)

そうなんです。毎朝6時~7時の間でウォーキングをしながら、社内外のゲストとZoomを繋ぎ、その人の生い立ちから、今やっていることまで深掘る対談をJALのW-PITメンバー向けに行っていて、かれこれ330回ほどやっています。付き合って下さる社内外の方々に感謝してもしきれません。

遠山正道

遠山正道

330回はすごいね。そもそもなぜ始めたんですか?

松崎志朗

松崎志朗

きっかけはW-PITでプロジェクトもご一緒しているポケットマルシェの高橋社長の“歩くラジオ(朝6-7時にオンラインで対談する取組み)”に私自身がゲストで出させて頂いた際に、「これ、すごくいい!」と思い翌日からW-PITでもスタートしました(笑)やるからには1000回を目指したいと思っています。あと2年・・・(笑)ぜひ遠山さんにもいつかゲストとして登場いただきたいです。

遠山正道

遠山正道

ぜひ!さっそく本題に入ると、今お話にも出てきたW-PITについて聞かせていただきたいのですが、「JALをベンチャーに。」というミッションを掲げたこのチームを松崎さんが立ち上げていますよね。具体的にはどんな活動をされているんですか?

松崎志朗

松崎志朗

W-PITが主にやっていることは、異業種との共創事業ですね。航空産業を見ているだけでは気づかなかったようなアイデアって他業界にはたくさんあって、異業種とコラボすることで新しい価値創造ができればと考えています。例えば、よなよなエールで有名なヤッホーブルーイングとタッグを組んで、JALが持っている移動手段や地方支店と、ヤッホーブルーイングが持つ自慢のクラフトビールを通じてファンの方々に楽しんでいただくイベント力を掛け合わせて、「呑みにマイル」という日帰り企画を実施しました。このようにWakuwakuを起点に2社のアセットを掛け合わせて新しい価値創造を実現していくのが、W-PITです。

遠山正道

遠山正道

日帰りってすごいね。

松崎志朗

松崎志朗

はい、日帰りにこだわりました。飛行機に乗って行く飲み会ってなくない?ってところから始まりましたね(笑)あと1泊してしまうとツアー感が出るので日帰りにして尖らせました。

遠山正道

遠山正道

とても面白い取り組みですね。本業がありながらW-PITという社内ベンチャーを立ち上げていろんなプロジェクトを立ち上げていると思うんだけど、どういった経緯があったの?

松崎志朗

松崎志朗

私自身、2009年に新卒入社して、はじめは成田空港で地上でのチェックイン業務を担当していました。その後IT企画部に異動し、収入最大化を担うレベニューマネジメントシステムの刷新業務等を6年ほど担当しました。
2016年に、JAL社内でイノベーションを創発する活動を推進していこうという流れがあり、“ITイノベーションラボ”という活動が発足し、私は事務局としてアサインされました。この活動から5チームが生まれ、それぞれのチームごとにビジネスプランや企画アイデアを役員にプレゼンする機会があったのですが、事務局として携わる中で、私自身も「この取り組みは面白いな」と思い、事務局にもかかわらず1つのチームを立ち上げました。他のチームが「ロボティクスを使って、空港のオペレーションを効率化する」とか、「VRを使って、新たな顧客体験を!」といったアイデアを企画している中、自分らしさってなんだろうって考えたときに、やりたいことをやっているときだよなと思いました。そこで、キャッチ―な“Wakuwaku”で攻めようと考え、Wakuwakuを武器としたチームを立ち上げたのです。それが今のW-PIT(Wakuwaku Platform Innovation Team)です。

遠山正道

遠山正道

なるほど。W-PITのWがWakuwakuっていうのはすごくいいね。さきほどのヤッホーブルーイングとの企画の話もそうだけど、松崎さんはJALという大きな会社のアセットをうまく活用しながら、自分のやりたいことを実現していますよね。
私のことも少しお話すると、スマイルズは三菱商事からMBOして独立したんだけど、もともと私自身は独立志向じゃなかったんですよ。あんまりいい表現ではないかもしれないけど、当時の世の中にあった言葉で言うと、“歌って踊れるサラリーマン”でありたくて。要するに、大きな会社にいながら、軽々と自分のやりたいビジネス、やりたいことをやっているというポジションを取りたかったんです。だから、社内ベンチャー制度でスマイルズという会社ができて、何年かしてMBOするんだけど、もともと独立したかったというより、その時はその選択が最善だと思ってとった手段なんですよね。だから、全然三菱商事を離れるつもりもなかったんですよ。

松崎志朗

松崎志朗

そうだったんですね。遠山さんはご自身の好きなことをうまくビジネスや仕事に取り込んでいくのがとてもお上手だなと尊敬していまして、遠山さんの言葉で一番好きなのが「公私同根」という言葉です。仕事もプライベートも根っこは同じ、ということだと思うのですが、まさにデスクに向かう時間だけが仕事じゃないんですよね。サウナに入ってボーっとしているときや、朝歩いているときにポンってビジネスアイデアが降りてくることがあって。日ごろからいかにアンテナを高く張っているのかどうかが、結果的にデスクとか会議室の仕事をアクティベイトする原動力になっているなって気づいたんです。まさに公私同根かなと(笑)だから、私は異業種の方々とつながり、自分にはない視点や発想にも触れることで新しいアイデアが生まれて、そのアイデアとJALのアセットと掛け算してこんなことやってみようという着想に至るんですよね。

遠山正道

遠山正道

まさにそうですね。仕事をしている自分もプライベートの自分も、根っこは同じ。だからこそ、自分の好きとか興味関心を軸にアンテナを張ってみることで、普段の仕事の中では触れない情報に触れることができたり、それがビジネスのアイデアになることもある。
松崎さんの話に付け加えるとするならば、“異業種”でもいいんだけど、“異業種”というとビジネスフィールドを前提としているから、そこにアーティストだったり、主婦だったり、子どもだったりっていうのが加わるとさらに面白いかもしれませんね。異業種に代わる言葉を生み出してみてもいいかもね。

松崎志朗

松崎志朗

確かにそうですね。異業種というと、企業に絞ってるように聞こえますね。

好かれて信頼されて、はじめてやりたいことができる

遠山正道

遠山正道

W-PITのメンバーは150名ほどいるとのことですが、所属しているみなさんには、なにか変化はありましたか?

松崎志朗

松崎志朗

もちろん変わる人、変わらない人がいます。変わった人で言うと、10年以上函館空港でチェックイン業務をやっていたメンバーが、W-PITにジョインして、現地の1次生産者やお弁当屋さんとタッグを組んで、函館空港でしか買えない「絵になる空弁」というのを開発したんです。
はじめは「稟議って何ですか?」という状態からスタートしたのですが、メンバーでサポートしながら形にして、実際、目標1600食だった空弁を結果1800食ほど販売し、メディアにも取り上げていただけるほど大きな反響をいただきました。もちろん事業計画書を書いたこともなければ、商品開発したこともないところから、W-PITに参加して1年でこういった成果を残し、今ではランドマーク的存在になりましたね。

▲W-PITメンバーが開発した、「絵になる空弁」。

遠山正道

遠山正道

すばらしいですね。その一方で、W-PITを運営している中で、難しいと感じるところはありますか?

松崎志朗

松崎志朗

好きなことをやるって難しいんだなと気付いたことも学びですね。やりたいことがあるならやればいいって話なんですけど、やりたいことだけをやろうとすると、さまざまな障壁があります。やりたいことをやるには人に好かれて、信頼されないとダメだと思います。だから、まずはやらなきゃいけないことを当たり前にやれるようになって、上司や同僚から好かれて、あいつは大丈夫だと信頼されてはじめて、やりたいことができる。その考え方を浸透させるのはなかなか大変ですね。

遠山正道

遠山正道

好かれて、信頼されるために、なにか意識していることってあるんですか?

松崎志朗

松崎志朗

特別なことはないのですが、とにかく一生懸命にやる。やり始めたことを、やり続けて、やり切る。シンプルにそれだけな気がします。
私のモットーは、有言していかに実行するかというのをとにかく価値のど真ん中に置いています。私は資料を作らせて天下一品のものを作れるわけでもないし、事業計画書をうまく作れるわけでもないし、社内調整では何回も失敗しているし、要は一人ではなにもできないんです。だからこそ、異なる得意分野を持つ仲間と共に、ビジョンを共有し、一緒になって取り組む。それが私の仕事のスタイルでもあるんですよね。
偉そうには言えないんですけど、なにかやりたいっていう人はたくさんいるんです。でもちょっと困難にぶつかると、まずできない理由を探す。本業が忙しい、時間がない、仕組み(環境)が不十分だとか。でも全ての主語は「I=自分」じゃないといけなくて、やらせてもらえなかったじゃなくて、やれるほど自分の意志が強くなかったっていう考え方を私自身は大事にしています。できたことは謙遜する必要もなくて、自信を持ってできたと言えばいいし、出来なかったことは外のせいにするんじゃなくて、堂々と自分の力が足りなかったと言えばいいと思うんです。

遠山正道

遠山正道

経営者としてはそうやって最後まで責任もってやり切る社員がいるのは嬉しいよね。Wakuwakuを起点に自分の内発的動機からスタートするからこそ踏ん張れるというのもあるでしょうね。

松崎志朗

松崎志朗

はい、Wakuwakuの強みは継続力だと思っています。

遠山正道

遠山正道

冒頭の散歩の話もそうでしたが、やると宣言してやり続けるって、そうはいっても簡単ではないと思うんだけど、松崎さんはもともとそういうやり続ける力を持ち合わせていたのですか?

松崎志朗

松崎志朗

いえ、そんなことはなくて、継続することの大切さを僕に叩き込んでくれた人が実は二人いるんです。一人は妻です。彼女もそうですし彼女の家族を見ていても、本当に努力を続けることのできる家系で、コツコツとやり続けることが実を結ぶということを間近で教えてもらいました。
もう一人は、 IT企画部にいたときの上司です。プライドのプの字もなくなるくらい僕の仕事への向き合い方を叩き直してくれました。「あなたは仕事の進め方が傲慢だし、易きにながれるし、そういうことを続けていると誰も松崎のことを信頼しなくなるぞ」と。それから毎朝7時に出社して上司にプレゼンし、厳しいフィードバックをもらって…というのを1年くらい続けました。上司も毎朝付き合ってくれて。なんでこんなに厳しいんだろうって当時は思っていたのですが、その上司が伝えたかったことは「やるといったことはやれ、やれないならやりたいっていうな」ということだったと数年後に気付いたんです。振り返ってみても大変な時期でもありましたけど、愛情だったんだな~と。

遠山正道

遠山正道

松崎さんにもそのような経験があったんですね。こうして新しい取り組みにチャレンジを続ける今の松崎さんにつながる、「あの時の一歩が自分を変えた」という経験はありますか?

松崎志朗

松崎志朗

高校3年のときにアメリカ留学したあの1年がなかったら、今の自分は何もないと思いますね。もともと幼少期の6年間をアメリカで過ごしました。帰国後、英語を話してといわれることが多く、それが嫌で話すことを避けていたら、本当に話せなくなりました。そして今度は英語が話せないっていうコンプレックスを持ちはじめ、あるとき兄から「お前留学行った方がいいんじゃない?」と一言ぽろっといわれたんです。それをきっかけに留学することを決めるんですけど、留学したからといってすぐ話せるようにはならないんですよね。

そこで自分がどうやったら自信をもって英語を話せるかってことを自分なりに考えて行動し、少しずつ友人を増やしていきました。自分なりに考えて行動することで自信を持てた経験はとても大きくて、自分が自信を持つ方法を知っていることの大切さに気付かされました。私は発明家でも手に職があるわけでもないから、行動の先にしか、私が自信を持てる術ってないんだろうなって気づいたんです。毎朝の散歩対談もそうですが、それを始めたこと、そして継続していることが自分の自信につながることを分かっているので、だからこそやめられないというのもありますね。

遠山正道

遠山正道

私は「行動には神様がおまけをつけてくれる」なんて言い方もするんだけど、一歩踏み出してみるとサポートしてくれる人が出てきたり、それこそこうやって新しい機会を生み出し、共創につながることもある。やはり、行動自体に価値があると私も思います。

giraffeというブランドは、実は “サラリーマン一揆”というコンセプトで立ち上げています。giraffeは胸元に宿す小さな意思表示。小さな行動が大きな変化へとつながる。giraffeはその一歩を踏み出す人のためのブランドであり、一人ひとりの意思表示であり、行動なのです。 松崎さんのお話を聞いていて、まさにgiraffeのコンセプトを体現しているようでとてもうれしくなりました。

▲当時(1998年)、遠山がgiraffeを構想したときの企画書の一部。


遠山正道

遠山正道

今年の年賀状で「だってことにする」ってことを書いたんだけど、それはある種の言い訳で、それをきっかけにまずは飛び込んでみることが大事だと思います。JALだからこそのアセットやリソース、与信など最大限に活かしながら、まさに松崎さんのようなチャレンジをし続ける方が増えていくであろうW-PITの今後がとても楽しみです。
私もなにかJALさんと一緒にやりたいこと、今後ご相談させていただくかもしれません。 本日はお時間いただきまして、ありがとうございました。

▲遠山が松崎さんにgiraffeのネクタイを選んでいる様子。

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(編集後記)
JALという大企業の中で、自身の発意=Wakuwakuからやりたいことを実現していく。そしてそれをご自身だけでなく社員たちが実現できるプラットフォームとして実装させていくという試み。松崎さんがW-PITを通じて実現しようとしている世界は、giraffeが発信したいメッセージそのものだと感じるインタビューとなりました。今後のW-PITの取り組みがますます楽しみです。

松崎志朗さん
日本航空株式会社 国際提携部 兼 JAL公認社内ベンチャーW-PIT代表・発起人
2009年新卒で日本航空に入社。成田空港での地上業務、IT企画部でのシステム開発プロジェクトマネジャーやイノベーション創発などを経て、2017年から現職のJALとアメリカン航空のジョイントベンチャー(共同事業)や、JALが加盟する航空連合ワンワールドアライアンスの企画・管理・運営全般を担当。
その傍ら、2016年に自ら立ちあげたW-PITの運営推進全般、ならびに(株)ヤッホーブルーイングや(株)ポケットマルシェとの共創リーダーを務める。これまでに、ヤッホーブルーイングとの「呑みにマイル」(呑むためだけに飛 行機に乗って地方に行く日帰り旅)や、ポケットマルシェとの「Japan Vitalization Platform ~青空留学~」(都市と地方をかきまぜることを通じて日本を元気にする運動)を推進する。
父親の教えである「若い人が考えたことをできるだけ実現させるのが経営の仕事」を胸に、これからも仲間の”Wakuwaku”を実現するプラットフォーマーとなるべくW-PITに勤しむ。

W-PIT公式Webサイト
https://wpit-official.themedia.jp/

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