TiE UP! Vol.9
見えない時間をデザインする。
届けたいのは「ちょっといい時間、ちょうどいい時間。」
私たちの暮らしの中に当たり前にレギュラーコーヒーをたしなむ時間ができたのは、コーヒー器具メーカー「Kalita(以下、カリタ)」のおかげといっても過言ではないかもしれません。そんなカリタさんとgiraffeが出会い、コラボレーションが実現。
TiE UP!Magazine vol.9のハタラキビトは、カリタの営業として働く早坂忠弘さんと藤田港人さんです。ネクタイとコーヒーの共通点から見えてきたのは、働くヒトにとって大切な時間でした。
今回のインタビュアーはgiraffe営業サポート室長の渡邉幸雪です。
実はネクタイで実現するのが難しかった、カリタチェック。
渡邉
本日はよろしくお願いします。今年の1月末ごろからやりとりさせていただいていますが、最初は早坂さんと藤田さんがgiraffeニュウマン横浜店に来ていただいたことからのスタートでしたね。
藤田
元々giraffeは知っていて、ニュウマン横浜店にはプライベートで何度かお邪魔していました。そこで拝見したロッテさんとのコラボがすごく印象的で。特にガーナチョコレートのネクタイのインパクトが凄かったです。そこで、カリタの赤チェックやコーヒー器具の柄などのネクタイがあったらかわいいなと思い、社内に持ち帰り日ごろ一緒に仕事をすることの多い先輩である早坂に「ぜひgiraffeとコラボしたい」と相談しました。
早坂
コーヒー器具専門のカリタですが、ちょうど異業種とのコラボでコーヒーファン以外の方にも認知を拡げる活動を行っていまして、giraffeさんはぴったりだなと。またそれ以上に、弊社代表の石田が、前々からネクタイを作りたいと思っていたのも大きなきっかけでしたね。
実際にgiraffeの店舗にお邪魔して、ネクタイのクオリティに驚きました。店舗スタッフの方にご相談したところ、本部の渡邉さんにご連絡してくださり、その後すぐに渡邉さんから連絡がきましたが、そのメールがとても熱い内容のもので、すごく印象に残っています。弊社の「ちょっといい時間、ちょうどいい時間」という企業理念にも触れていただきながら前向きなメールをいただき、気持ちも高まりました。
渡邉
コロナ禍になって、仕事やプライベートの些細な時間にネクタイはどうやって関わることができるのかというのを社内でも話していました。そんな時に、まさにそれをコンセプトにしているカリタさんとの出会いがあり、運命的なものを感じましたね。
さらに、デザイナーの中村裕子がカリタさんの器具の愛用者だったこともあり、社内でも盛り上がりすぐに話が進みました。
実際に完成したネクタイを見て、いかがでしたか?
早坂
渡邉さんをはじめ、giraffeの皆さんにすごく親身になっていただいていたので、絶対いいものができるだろうとは思っていましたが、出来上がったものを見たら想像以上で嬉しかったですね。社内でお披露目したところ、みんなすごく喜んでいました。早く販売して、いろんな人に見てもらいたいなと思います。
渡邉
嬉しいです。ありがとうございます。早坂さん、藤田さんはもちろん、お打ち合わせでは直接石田社長ともお話しさせていただいて、カリタさんのすごく温かい家族のような雰囲気を常に感じていました。だからこそ、もっとこんなことができるのでは、この方がいいんじゃないかと私たちもご提案に熱が入りました。
藤田
元々giraffeさんのネクタイやタイピンを見ていたので、ある程度心の準備はできていたんですが、正直圧倒されました。縦横チェックをネクタイで表現するっていうのが難しく、なかなか実現していなかった企画なので本当に嬉しかったですね。 特にこのコーヒーフィルターのタイピンはかわいいですよね。実際に上から見るとコーヒーが入っていて。
渡邉
社長とお話しした時も、いろんな企業に聞いてみても縦横チェックをネクタイで表現するのは難しいと言われていたとお聞きしました。ネクタイは生地の伸縮性を生かすため斜め45°に裁断して作るのが通常なので、レジメンタルといわれる斜めストライプの柄が多いのはそのためなんです。デザイナーの中村もすごく苦戦しながらも、職人さんと何度も試行錯誤を重ねながらやっとここまでたどり着きました。
フィルターのタイピンにも、giraffeでしか表現できないものをというこだわりが反映されています。気に入っていただけて本当に良かったです。
渡邉
少し話題を変えますが、お二人が仕事をする上で、大事にしていることを教えてください。
藤田
お客様と直接お話しすることを大切にしています。創業当初からお付き合いのある企業を引き継ぎで担当することもあり、何十年もカリタを見てきている担当者の方々とお話しすると、カリタについてもコーヒー業界についても沢山教えていただけるんですよね。新卒入社2年目でまだ社歴が浅いため、初めて聞くことも多くいろいろ吸収しています。そのためにも、会話がすごく大切ですね。
藤田
そんな中に今年の春のPASS THE BATON MARKETに出展させていただいたんですが、ここでの会話は印象的でした。今までカリタは喫茶店や小売店などのお取引先とのやりとりがメインで直接お客様に販売するという機会があまりなかったのですが、マーケットでは、お客様と直接お話ししたり、早坂と選んだ出品商品を手に取って「かわいい!」など言っていただけて。お客様の声を実際に聞く機会がこれまでなかったので、とても貴重で良い経験になりました。
渡邉
マーケットではいつもと違う会話があったんですね。早坂さんはいかがですか?
早坂
“ネクタイ”ですかね。giraffeさんと仕事してより一層意識するようになりました。 営業として仕事をする上では、人は見た目が一番大事だと思っています。顔抜きにして一番最初に目につくのはネクタイなんですよね。新規の営業先と「これgiraffeさんが作ってくれたネクタイなんですよ」ってまず30分くらいお話しできます(笑)。そういうコミュニケーションのきっかけとしても役立ちますし、一緒にお仕事をする相手に与える印象をよりよいものにする上ですごく重要だなと。
渡邉
お客様との営業のときに話が弾むように…とは私たちもデザインのとき意識していたところなので、とても嬉しいです。
意外な共通点は、見えない時間をデザインすること。
渡邉
カリタさんとご一緒してから、giraffeでもコーヒーを淹れるという習慣ができたんです。器具サンプルをいただいたこともあり、朝礼終わりにじゃあ一旦コーヒー淹れようといういい時間ができ、スタッフとの何気ない会話が増えました。今回のコラボで、カリタさんからそういう素敵な時間を共有するきっかけをいただきました。
早坂
コーヒーって淹れてる時間が気分転換だったり、いい香りに引寄せられてコミュニケーションの場になったりするんですよね。カリタ本社にはコーヒーを淹れられる場所は2階から6階まであり、誰かが淹れてると自然と人が集まって、ざっくばらんな話ができます。
藤田
入社したての頃、早坂から「まずは、自分で積極的にコーヒーを淹れるように」と言われていました。社内のいろんな人と話ができるから積極的に行きなよということでしたが、これが本当に良かったんですよね。
渡邉
そうなんですね。コーヒーを淹れることって、もちろんホッと一息つきながら飲むことが目的でもありますけど、ドリップしたりそのプロセスまで大切な時間として楽しめますよね。giraffeも毎朝その日のネクタイを選ぶ時間やギフト選びとして相手のことを思う時間からデザインしたいと考えながらモノづくりをしているので、そういった“見えない時間をデザインする”というのはカリタさんとgiraffeとで共通する部分なのかなと思いますね。
早坂
一見交わらないものに見えますが、朝ネクタイを締めて仕事モードに入ったりコーヒーを淹れて気持ちを切り替えたりと、どちらも気分を切り替えるものですよね。そういう面で、コーヒーとネクタイはすごく親和性があるんじゃないかなと思います。
渡邉
カリタさんは、そんなコーヒーをたしなむ心地よい時間を「ちょっといい時間、ちょうどいい時間」と表現し、それをすべての人にお届けすることを企業理念にされていますよね。 お二人にとっての「ちょっといい時間、ちょうどいい時間」とはどんな時間ですか?
藤田
私は社会人になってから、毎朝コーヒーを淹れる習慣を作りましたが、その時間はやはりいいなと。朝ちょっと早く起きてドリップしていると、心の余裕もできて仕事のスイッチも入ります。自分にとってはとてもちょうどいい時間です。
早坂
最近アウトドアメーカーさんとお付き合いする機会も増えたことをきっかけに、家だけではなく外でコーヒーを淹れることをはじめました。景色のきれいな場所にお気に入りの器具を持っていき、お湯を沸かすところからはじめて。すごく贅沢な時間だなとも思いますが、普段と場所を変えるだけでまた違う楽しみを得られるところにちょうどよさを感じます。
渡邉
ありがとうございます。今回カリタさんとお仕事をさせていただき、私にとっても「ちょっといい時間、ちょうどいい時間」ってどんな時間かなと考えてみました。
私は誰かのために仕事ができる関係性をずっと築いていきたいなと考えながら働いています。その仕事に向けて何かを考える時間こそが、私にとっては「ちょっといい時間」であり、「ちょうどいい時間」なんですよね。今まで気にしてなかった時間が「ちょっといい時間、ちょうどいい時間」だということを、この言葉を与えられたことによって気づかされました。カリタさんとご一緒する中で、自分自身を振り返ることができ、すごく良かったなと感じています。
早坂
とても嬉しいお話です。ありがとうございます。
新しいことにチャレンジするフットワークの軽さが、道を切り拓く。
渡邉
今の仕事や人生に繋がったなと感じるご経験やこれまでの決断ってありますか?
早坂
そうですね、私の場合は転勤を決めたことがいいきっかけでした。
元々地元の宮城で採用されて働いていたんですが、神奈川県の本社にくることになって。それまで宮城を出たことなくてかなり迷いましたが、本社に移動したことで大手コーヒーチェーンを担当させてもらったり、海外の展示会に参加することでカリタの海を越えた認知を実感できたり、踏み出してよかったなと感じています。
渡邉
今まで長らく過ごした場所を離れるのって、かなり勇気がいる決断だったかと思われます。決め手は何だったんですか?
早坂
もしダメだったら帰ろうかなってくらい、最後は軽い気持ちで決めました。そこに至るまでは、やっぱり生活がガラッと変わるというのがどうしてもイメージできなくて、マイナスなことばかり考えていましたね。でも今振り返ると本当にプラスのことばかりだったなと思います。
渡邉
なるほど。転勤が身近にある会社員にとって、とても勇気のもらえるエピソードです。藤田さんはいかがですか?
藤田
私は大学時代の経験ですね。地元の埼玉県を出て北海道に行ったことかなと。元々好きだったコーヒーの研究をすべく北海道の大学に進学をしました。そこでタコ漁のアルバイトをしたり、カーリングをしたり。
渡邉
コーヒーの研究にタコ漁、カーリングですか。非常に興味深いです。
藤田
話すとどれも長くなっちゃうんですが(笑)タコ漁は40代50代の方がほとんどだったんですが、その中に飛び込んでいき、飲み会に若者一人で混ざっていたりしたので、皆さんにすごくかわいがってもらいました。また、北海道に来たなら北海道らしいスポーツやりたいなと思いカーリングにも挑戦しました。研究室でコーヒーを淹れていたときにカリタの器具と出会い入社することにもなったので、やはりこの時期の経験がとても大きいですね。
渡邉
そうなんですね。いろんなことに新しく踏み込んでいくフットワークの軽さや行動力だったり、人がやったことないことにトライするというところはすごく仕事に活きてそうですね。
藤田
ありがとうございます。ちなみに、渡邉さんはどんな決断や一歩があったんですか?
渡邉
私もですか?考えてなかったです(笑)私の場合は高校生の時ですね。国体強化選手に選ばれるほど、がっつり剣道をやっていました。ただ、高校卒業しても剣道をやっていきたいと考えたときに、自衛隊か警察官か教員かというなんとなく決められた将来があって、周りもその方向に進んでもらいたいみたいな雰囲気を感じていたんです。それまで言われたことを真面目にやってきましたが、でもなにか違うことをやりたいという思いもずっとありました。そこで最後の大会で良い成績が出なかったら違うことをやろうと決めて、結果的には中途半端な成績で終わり、急に美容師になろうと決断しました。親にも先生にもびっくりされました。でも、周りから期待されているような、なんとなく想像ができる道から外れて自分で決断して行動に移したのはその時が初めてで。それ以降は自分の決めた道なので、選択した方の道になにかいいことがあるんじゃないかと自分で考えて行動できるようになりましたね。
藤田
すごくいい話ですね。きれいな反骨心というか。
渡邉
自分を表現したかったんですよね、きっと。でもこれまでを振り返ったときに、今選んだ道がgiraffeだったのも、何か意思を表示したかったのかなと。結果論ですが、意思表示としてのネクタイに巡り合えたのはとてもいいことだったなと思っています。
(編集後記)
創業60年を超える老舗企業でありながら、新しいことへのチャレンジを全く厭わない。そして、今でも社員一人ひとりの誕生日をお祝いするというアットホームなカルチャー。それこそがカリタという企業の強みであり、愛される理由だということを痛感しました。今回のインタビュー中にもふらっと石田社長や常務が顔を出してくださったりインタビューのお二人にエールを送る姿は、見ていてとても温かくまさに「ちょっといい時間」そのものでした。皆さんにとっての「ちょっといい時間、ちょうどいい時間」について、考えてみるきっかけとなればうれしいです。
■Profile
早坂忠弘(株式会社カリタ 本社営業部 営業一部 係長)
2008年、中途入社。自社製品 家庭用コーヒー器具・業務用マシンなどの営業販売に加えて、新規開拓および企業・キャラクターコラボ案件開拓に従事。
藤田港人(株式会社カリタ 本社営業部)
2021年4月新卒入社。自社製品 家庭用コーヒー器具・業務用マシンなどの営業販売、新規開拓に加えて、海外営業チーム、ロボットアームプログラミングチームにも所属。