TiE UP! Vol.13
「ジャストサイズは、在るようで無い。ジャストサイズは、自分で決める。」
TiE UP!Magazine Vol.13は、11月1日に発売となったgiraffe 2024AW TIE COLLECTION「JUSTSIZE」にちなんで、演劇ユニット「ジャストサイズ」の3人のメンバーにインタビュー。ジラフがコレクションに込めたメッセージとリンクして実現したコラボレーションは、「ジャストサイズ」3人の個性を表すかのように、サイズも生地も一味変わった鮮烈なデザインのネクタイに。
そしてこのインタビューは、夏真っ盛りの8月某日。演劇の街・下北沢でのイメージカットの撮影を経て、3人が行きつけという高田馬場の定食屋で行いました。彼らが20年続けてきた演劇活動やこれから進む道への思いを、ジラフとの共感部分・カルチャー的なバックボーンも織り交ぜながら話してもらいました。漠然と進んでいく世の中に風穴をあけるように、ジラフと「ジャストサイズ」がネクタイを通じて意思表示をします。
giraffeと劇団JUSTSIZEとの関係性は
giraffe 西本祐子
(以下、西本)
今日はお三方と下北沢を歩けて嬉しかったです。改めて今回のタイアップについてお話を伺わせてください。
劇団JUSTSIZEクロカネヤ
(以下、クロカネヤ)
いやぁ、それにしても暑かったですね。恥ずかしながらシャツが汗でびしょびしょです(笑)
劇団JUSTSIZEオオミシマ
(以下、オオミシマ)
本当に。これだとみんなネクタイしなくなりますよね。ジラフを前にこんなこと言っていていいのかわからないけど(笑)
西本
そうですね、本当に暑かったですよね。ご協力いただき感謝です。JUST SIZEにネクタイのイメージは無かったのですが、どうして今回の結成20周年でジラフに声をかけてくれたのでしょうか?
劇団JUSTSIZEウダガワ
(以下、ウダガワ)
普段はネクタイしないね。でも昔から好きなブランドでしたよ。
オオミシマ
そう。知り合いがジラフに関わっていて、割と前から知っていたんです。僕は代官山にある彼の奥さんのところで髪を切っていて、ってどうでもいい話か。
ウダガワ
どうでもいいね。
クロカネヤ
ネクタイのデザインはポップで可愛らしいのだけど、どこかアングラ感があって惹かれていました。実際何本か持っていますし。なんなら最初はネクタイのブランドって分かっていなくて、個性的な人たちがユニークなイベントとか活動をしているなーって印象でした。動物にネクタイ着けて、ファッションショーとかやっていませんでしたっけ?
西本
あります。那須で行われたSPECTACLE IN THE FARM(スペクタル・イン・ザ・ファーム)というイベントに出演した時ですね。
オオミシマ
自分たちも大学でデザインや美術を学んで、卒業しても表現を続けたいなって思った時に、他と同じことをやっても仕方ないしつまらないし、オルタナティブで在りたいみたいな話は良くしていたよね。ジラフにも同じものを感じたというか。
ウダガワ
一筋縄で行かない人が集まっていた感じね。
西本
初期の頃からご存じで、そのように言っていただけてとても嬉しいです。
ウダガワ
学校を卒業してユニットを組んで、気づいたら20年。また久しぶりに三人で何かやろうと考えた時、ふとジラフのことを思い出して。
クロカネヤ
思い出してすぐ連絡した。鮮度が大事だなーって。魚も釣ったらその場で神経締め。
ウダガワ
はじめたころのフレッシュな気持ちや変わらないって意識もあるけど、人間やっぱり年は取っていて、自分たちも丸くなってきているというか、思いきりに欠けるようになっているというか。
クロカネヤ
うーん、なんかこのまま続けていてもなぁ感はあったね、正直。初心に帰るってわけじゃないけど、自分たちがやりたいことをやらないといけないと思ったし、三人で何が好きだったっけ?みたいな会話もしたかな。
オオミシマ
武満 徹、坂本 龍一、あとジョン・ケージの演奏者が音を出さない『4分33秒』とかね。これまでのジャンルやトレンドに寄らないで、「こんなのもありなんじゃない?」って投げかけている人たちに憧れを抱いちゃうよね、とかね。
クロカネヤ
それで言うと、おれはスティーヴ・ライヒ、ウダガワはSpangle call Lilli lineとかGoing Steadyが好きだよね。自分を信じて疑わず、やりきっている様がいいなと。音楽ばかりだけど。
ウダガワ
一応、下北沢だし。
オオミシマ
赤瀬川 原平の『路上観察学会』にも影響受けているよね。街中には意図しない作品や気づかれない価値が沢山転がっている。モノやコトそのもの以上に、見る側の目が大事というか。
ウダガワ
オオミシマはケージにしても赤瀬川にしても、思想や哲学で勝負するアプローチが好きだよね。
オオミシマ
そこは自分のこだわりでもありますから。結局、最後にはウダガワにばっさり修正されちゃうんだけど。
自分のモノサシが必要、その意思や意識は都度忘れないようにしたい。
西本
今回、皆さんの公演『non-scale』にちなんだ衣装を作らせていただきました。こちらのネクタイはいかがでしたか?
クロカネヤ
やってきたなー!と思ったね。だって、このモジャモジャはさ、これネクタイなの?笑
ウダガワ
同感。シャツの襟に収まらないし。
西本
ありがとうございます。はい、これでいいんです。
オオミシマ
これはさ、世の中側が付いてきていないだけで、もうこういうものだ!って主張を続ければいずれ受け手側がフィットしていく問題だよ。みんな意見の不一致や認識のずれを過度に恐れる傾向にある。すれ違ったままにしておく、違いを理解したままにしておく、自分の中の解釈は噛み砕くけど放っておく。そうすると、そのまま形になったものが演劇。
自分のやりたいことをそのままできたらいい演劇をやれたらいい。ネクタイも同じでしょう。さらに言えば、ヨーゼフ・ボイスだって…
ウダガワ
オオミシマ、一旦落ち着こうか。
クロカネヤ
でも言っていることは分かる。お客さんの期待に応えられているかどうかを意識し始めるとつまんなくなる。そもそも頼まれて作っているわけじゃないんだから、自分の衝動に従って、自分のやりたいコトを貫かないとな。デザインの仕事を請けるときは、お客さんのイメージをカタチにするから全く逆のアタマでやっているけどね。
オオミシマ
もっと曖昧で、ざっくりしていていいと思うんですよ。昔はモノの尺度もテキトウで、1フィートって王様の足の大きさ基準で、王様が変わるたびに長さが違うから色々大変だったみたいだけど。現代の感覚からすると、そういう揺らぎや幅がある感じは羨ましくも思ったりする。
ウダガワ
知らず知らずのうちに、モノやルール、周囲のモノサシに自分を合わせちゃうんだけど、やっぱり自分のモノサシが必要で。その意思や意識は都度忘れないようにしたい。
西本
わかります。私はアイドルの推しがいるのですが、ファンとしては向上心があって絶対売れてやる!と思っている人を推したい。自分を信じていて、売れる気満々なのがいいんです。じゃないと推せないし、好きにならない。
最後は自分で決める。仕事もネクタイも演劇も。
ウダガワ
こっちのネクタイの横幅の広さが違うドットのシリーズは、純粋にかっこいいと思った。
オオミシマ
実際に手で触って、絞めてみるとやっぱりいい。こんな自分たちでもちょっとだけ上品になれる。
クロカネヤ
スーツ着て、これ締めるとスイッチ入るよね。なんか、この装いで三人並んでみるとさ、今までできなかった表現ができそうな雰囲気出てるもん。
ウダガワ
馬子にも衣裳かな。
オオミシマ
自虐入っている?笑。僕たちは知られていないし売れてないけど、演劇をすることと演劇の中に自分たちの真実があると思って活動を続けてきた。
西本
失礼かもしれないですけど、売れたい!って思ったことあるんですか?
クロカネヤ
そりゃ、売れたいと思ってるよ!イケてると思っているからこそなんで?と。自分では普通のアジじゃないぞ、この作品は関アジ1匹2,000円に匹敵する価値だ!って思っているんだけど。全然そうならないね。
ウダガワ
魚の例えが分かりやすくないんだよ、さっきから。
オオミシマ
売れなくていいわけじゃないけど、売れたいわけじゃない。なんでしょうね、この塩梅は。外に発信しているからには、コミュニケーションはしたいんでしょうね。それを否定することはできないから、自分で作るだけで満足できない。でも評価されたくないだけで、それぞれの見方を持って見てくれてるだけでいいというか。
ウダガワ
まぁ、ひねくれているし、面倒な三人なんですよね。
クロカネヤ
でも余計なことが大事って言うじゃない。ブランドを作る要素でコップをいっぱいにして、溢れた分が世の中に出る印象、みんながイメージできるものになる。やることやって溢れた分で価値は形成されるって誰かが言っていたよ。
ウダガワ
まだコップの中身が少ないのかもね。
オオミシマ
自分の歩いた道が道になる。歩いた道しか道にならないし、進むべき方向はそっちしかないんだよね。誰かの道を歩いてもさ。
クロカネヤ
寝かせることで出る良さもある。魚も釣りたてよりも熟成した方が旨い。下処理後、たっぷりの氷水に入れておくといい。
ウダガワ
自分に嘘をつかないこと。誰かに届けるものだから、相手の顔も気にはなるし、考えもするけど、最後は自分で決める。みんなの仕事もネクタイも演劇も、そうじゃないですかね。
西本
ありがとうございます。私の仕切り不足もあって、話があちこちしてしまったところもありますが、働くことやブランドを作っていく上で、立ち返り考えさせられるいい時間になりました。今日は一日おつかれさまでした。
劇団JUSTSIZE
こちらこそありがとうございました。お互い頑張りましょう。
実はジラフも再来年にはブランド設立20周年を迎えます。ブランドとして、ある意味「節目」を目前としている中で、同じ時間軸で活動してきた「劇団JUSTSIZE」の3人から発せられる言葉は、まさに今回のネクタイに込めた思いそのままでした。
ふと自分自身の軌道を振り返った時、今の自分へ改めて問いを投げかけ、考え、気づく。それがまたこれからの行動のしるしになるような、そんなインタビューになりました。
<プロフィール>
■演劇ユニット「劇団JUSTSIZE」
2004年に芸術大学の同級生であるウダガワ・オオミシマ・クロカネヤが結成した演劇トリオ。グラフィックデザイン、映像芸術、広告表現を学んだ3人が短い社会人経験を経て、自分たちの興味の領域を自身の身体を通じて表現することを志向し、演劇の世界に飛び込む。一般企業で働いた際に感じた疑問や違和感、苛立ちなどの経験が表現の根底に流れている。脚本、演出はもちろん、舞台美術やフライヤーのデザインまで自分たちで手掛ける。時事的話題と寓話を融合させた独特の脚本は、見るものを空想の世界に誘いつつも、今を生きる私たちに現実のリアリティや人間の本質を突き付けるシリアスさを兼ね備える。シリーズによっては、起承転結がはっきりした昔話を彷彿とさせるような教訓めいた作品や、お笑い調のボケ・フリを繰り返すコントのような作品を披露することもある。また中央や中心を作りたくないという思想があり、「全員が脚本を書いて全員が演出をする」のも特徴。作品ごとに3人の役回りやキャラクターの変化が大きい。「観客が抱くイメージや個々の役割を固定化したくない」という意志が強い。3人の髪型だけは結成からほぼ変わっていない。
今年結成20周年を機に、彼らがかねてより愛用していたネクタイブランド「giraffe」とのコラボレーションを発表。
■西本祐子
秋田県出身。大学時代から始めたアパレル販売・店長職を経て、2019年スマイルズに入社。giraffeでは、法人営業・店舗SV・イベント運営・店舗販売・販促企画・衣装リース・SNSの中の人など「なんでもやる人担当」。酒場とガールズアイドルを愛し、ライブ遠征もするタイプのヲタク。仕事もプライベートも「フッ軽」が信条。「劇団JUSTSIZE」は、結成当時からウダガワ寄りの箱推し。